
こんにちは。
バスケ関連の情報にアンテナを張っているとよく目にする
「シュートはどこでうつのか?」
という問題。
うーん…。
以前、ちとバスさんのインタビューを受けさせてもらった時に、簡単にお話しさせていただいたのですが、もう少し考えを文章にしてみようと思い立ちました。
シュートは全身運動ですから、特定の部位でシュート動作が達成されているわけではありません。
これは前提として当然みなわかっていることだとは思うのですが、
最近、特定部位にフォーカスをあてるような情報が多いように感じます。
情報が偏っているという見方もできると思います。
今日はこれに関して個人的な考えを書いていこうと思います。
良し悪しの議論ではないので気楽に読んでいただければ幸いです(^^)
目次
バスケに関わる身体の変遷
「シュートはね。ケツでうつのよ。ケツで。」
聞いたことがありますよね。絶対。
昨今バスケ界隈にも進出してきた「ケツ」。つまり股関節のことですね。
この股関節がシュートにおいて重要だというのがケツ派の意見です。
股関節を使えば、
- ボールが飛ぶ!
- シュートが入る
といった情報はSNSも含めかなり多いように感じます。
さて、なぜこんな事になっているのでしょうか。
まずは、シュートも含めた少し広い視野で、バスケ界でフォーカスがあたってきた身体の変遷を見てみましょう!
「ケツ」の前は「膝」が多かった?
バスケ界隈に「ケツ」が訪れるまでは、シュートにおいても「膝」が主流だったのではないでしょうか。
「膝をしっかり曲げて」
「膝を柔らかく使う」
「膝で力を伝える」 などなど。
聞いたことありませんか?
ちなみに私(28歳)もミニバスからバスケをやっていますが、当時「ケツ」を意識しろなどと言われたことはありませんし、気にしたこともありませんでした。
おそらくまだ「膝」の時代だったのでしょう。
言われてみれば、シュートに限らず多くの動作で膝にフォーカスが当てられていたように思います。
ディフェンス、ジャンプ、ピボットなどなど。
もしかすると、バスケにおいて膝を意識する傾向は他スポーツよりも強かったのではないでしょうか。
バスケに訪れた「体幹」の概念
膝の時代に訪れた新しい概念が「体幹」でした。
私が中学生くらいの頃でしょうか。
バスケ界に「体幹」という概念が訪れます。
「体幹を安定させることで競技レベルが向上する」
これは衝撃でしたよね。
もちろんシュートにおいても、体幹を安定させればシュートが
- 安定する
- 飛ぶようになる
- 入るようになる
とよく言われるようになったのです。
この頃はしゃかりきに体幹トレーニングしていました。
(そういえば体幹トレは背が伸びなくなるという謎の噂もありましたよね…)
「ケツ」の概念が訪れたのはこの次です。
バスケに「ケツ」がやってきた!
おまたせしました。
「体幹」が一世を風靡した少し後でしょうか。
パフォーマンスを上げるためには「ケツ」が重要であるという概念がバスケ界に訪れます。
ただ、まず浸透したのはダッシュ、ジャンプ、サイドステップといったスポーツにおける基本動作の部分でした。
これは、もともと股関節の重要性などをしっかりと研究結果として示してきた方々が、バスケ動作ではなく、スポーツの基本動作(ジャンプ、スプリントなど)でその重要性を示してきたからです。
これを体幹の時代あたりからスポーツ科学に目を向け始めたバスケ界が取り入れたわけですから、
「ケツ」の重要性がまずそこに向いたことは至極当然であると言えます。
「ケツ」の重要性は科学的に証明されているわけですから、トレーニングをしっかりと取り入れれば競技力は上がります。
ミニバスでその効果を実感できるかはわかりませんが、中学、高校、大学のレベルであればその効果はフィジカルに面で如実に現れたことでしょう。
そして、そういったことを背景にバスケ競技者であれば息をするように考えているであろう、シュートに「ケツ」の概念を応用しようと考えたわけです。
これが「シュートはケツでうつ派」の発生と台頭の流れです。
(もう一度言いますが、個人的な見解です。)
「ケツ」はトレンドか?
さて、これまでバスケ界に訪れた身体に関する概念を個人的見解のもと整理してみました。
私と同じ年代の方は「あぁ〜確かに」となるのではないでしょうか。
または俯瞰してバスケを見てこられた指導者の方も。
ただ、そうすると見方によっては膝も体幹も股関節もトレンドの一つだったのでは?と思われる方もいるかも知れません。
つまり、今は股関節が流行っているが、また膝の流行りが来る、と。
そういった意味ではシュートにおいても、スポーツ動作においても、
トレンドによってフォーカスされる部位が変わっていくことを否定することはできません。
あまりイメージがないかもしれませんが、科学的研究においてもトレンドはあります。
我々、理学療法士の治療にもトレンドはあります。
良い悪いの問題ではなく、仕方のないものであり、当然のものであると思います。
ただ、そのトレンドに振り回されるのか、俯瞰しておけるのか、では指導に違いが出るように思います。
揺るぎのないものを探す
トレンドに振り回されると痛い目にあうことがあります。
トレンドはその多くが以前のものを否定する形で出回ります。
それはその方が多くの人の興味を引きますし、インパクトがあるからです。
例えば、
「シュートは膝ではなく、ケツでうつ!」
と言われると膝派の人は興味が湧くでしょう。そして、それが正しいように思え、
「これまでの指導は間違っていた。これからはケツでうつシュートを教えよう」となります。
しかし、これがトレンドだった場合、数年後にまた
「シュートはケツではなく、膝でうつ!NBAではみんなこうしている!」
と指導のトレンドが変わるわけです。
つまり、トレンドによって「正しさ」を追ってしまっては、いつまでも「正しさ」が定まりません。
正しさが定まらないことで不利益を被るのは選手、あるいは指導者自身かもしれません。
そうならないためには、揺るぎないものを探さなければなりません。
揺るぎないもの
と言ってもよくわからないと思いますが、
私にとっての揺るぎないものは、物理学、解剖学、バイオメカニクスによって説明できるもの、矛盾しないものです。
私にとってはシュートにおける膝も体幹も股関節も揺るぎないものによって説明できるものですから、
例えばシュート指導のトレンドによってどこにフォーカスが当てられていようと振り回されることはありません。
そうなると、各部位が重要な役割をしているという前提のもと、
「今のトレンドはこうなんだ」
と俯瞰して見ていられます。
なので、最近のシュートと股関節に関する話も、
スポーツ動作に限らず、人間の動作において股関節が重要であることは構造上当然であるから、
シュートにおいても重要なのは間違いないだろう、と考えています。
俯瞰して見ているからこそ、
いま股関節にフォーカスを当てた指導が流行るのがよくわかりますし、この次にどの部位にトレンドが行くのかも予想ができます。
私にとって、
「シュートはケツでうつ」はトレンドです。
逆に、シュート動作における「ケツ」や、「膝」、「体幹」の重要性はトレンドではなく、揺るぎないものなのです。

バスケ界で「ケツ」が流行る理由
もう少し読んでいただくと、何となく私の伝えたいことがわかっていただけるような気がします…。
いま、バスケ界では「ケツ」が流行っています。
私は多くのチームにお邪魔してきましたが、どのチームも「ケツ」に夢中です。
「ケツの使い方を教えてください」
「ケツを使ったシュートを教えてください」
よくいただく依頼の内容です。
ただ、この現象、サッカーや野球、陸上競技などでもありました。
使い方やフォーカスの当て方はそれぞれですが、スポーツ科学をより早期に取り入れている競技にはとっくに起きている現象なのです。
野球なんて一体何周してまたこの股関節がトレンドになっているのでしょう。
サッカーも股関節を通り越し、最近では脊柱や肩甲骨、腕など、よりパフォーマンスを上げるために重要だとされる部位が変わってきています。
陸上短距離などは手の握り方などまでフォーカスがいったことがあります。
さて、問題はトレンドが変わった時(注目される部位が変わった時)、以前注目されていた部位は不要になってしまったのか?ということです。
実際に、そういうこともあります。
科学的手法によって否定され、不要とされることもあります。
ただ、今回の「ケツ」のようにスポーツ動作において科学的に重要であると証明されたものは、トレンドが変わってもその重要性が変わることはありません。
サッカーにおいて現在注目されている部位を紹介しましたが、「ケツ」が不要であるとしているわけではありません。
つまりこれは、当たり前な概念になるということです。
「ケツ」だって当たり前に
いま、バスケ界には「ケツ」というトレンドがやってきています。
様々な動作においてその重要性が注目され、まさに大流行というやつです。
でも思い出してください。
以前のトレンド「体幹」はどうなりましたか?
当然のものになっていますよね。
最近では我々が指導などしなくても、指導者の方がその重要性を当然のものとして体幹トレーニングを実施しています。
今回の「ケツ」もそれです。
今まで注目されたことがなかったからこそ、流行し、
今までトレーニングしていなかったからこそ、如実に効果が出るのです。
そうなればさらに流行りますよね。
バスケ界の「ケツ」は現状こんな感じだと思っています。

これまで鍛えてこなかったんですから。
おっと、シュートの話から大分それてしまいましたね…。
話を戻します。
シュートと股関節
ここまで読んでいただければ何となく伝わるものがあったのではないでしょうか。
私にとって動作における股関節の重要性はすでに前提です。
前提となった上でトレンドが何周もしています。
ただ、シュート動作という特異的な動作となると少し話が変わってきます。
この記事の題でもある、
「ケツでうつ派」Vs「膝でうつ派」
は、トレンド同士のせめぎ合いであれば非常に面白いものなのですが、
現状、バスケのシュートがそこまで到達している印象はありません。
つまり、「どっちが正しいんだ?!」といった答えのないやり合いです。
どちらが正しいもありません。ただのトレンドですからね。
どちらも正しいですし、おそらく今後フォーカスされる部位も変わってくるでしょう。
では、シュート動作にはトレンドに左右されない「正しさ」があるのか。
これが実はあるのです。
シュートに重要なのは膝関節と肩関節
股関節は?!
いやいや、そんなやり取りはもうやめましょう。
もうトレンドの話ではありません。
股関節がシュート動作において重要なのはとってもよくわかります。
ただ、どの動作、どの競技をとっても股関節の重要性は揺るぎないものなのです。
つまり、全般的な動作において重要な股関節をバスケのシュートという超特異的動作においても持ってくるのはおかしいということです。
変な例えをしてみます。変な例えですからね。
Q:バスケのシュートにおいて最も重要な部位はどこですか?
A:脳です
……。
いやいや。
と思いませんか?思いますよね。
でも、私にとって「シュートはケツでうて!」はこう聞こえています。
それほど股関節という部位は人間の動作における前提です。
だからこそ極める必要があり、様々なトレーニング方法があり、何度もトレンドに登場するのです。
そういったものを前提として私は、
Q:バスケのシュートにおいて最も重要な部位はどこですか?
という問いに対して
A:膝関節と肩関節です。
と答えます。
私の中の揺るぎないもの(物理学、解剖学、バイオメカニクス)によってシュート動作という超特異的な動作を分析して出した答え(今現在の)です。
誰がなんと言おうと、トレンドが何周しようと、今のところ私の答えはこれです。
シュートという特異的動作の肝は膝関節と肩関節です。
「シュートが入るようにするにはどうすればよいですか?」
この質問に答えたところでこの記事は終わりにしようと思います。
私の場合は、先程言ったとおり、「膝関節」と「肩関節」の動きを中心にシュート指導を行います。
そうすることによりトレンドなおrhgkっそjsgk……。
ってちがーう!!違う。全然違います。
そして、「まずはとにかくシュート練習をすることです」といった答えとも視点が違います。
私の第1の役割はシュート動作をするための体を作ることです。
では何をするか。
体幹と股関節の機能を高めること、そして、それをシュート動作に使えるようにすることです。
結局ケツですか…?
ケツです。
しっかりとこの記事を読み込んでくれた方はわかると思いますが、
なぜいま「ケツ」がバスケ界のトレンドになっているか?ということを考えれば至極当然のことです。
要は、これまでケツに注目してこなかった、トレーニングしてこなかった、使ってこなかったからこそトレンドになっているのです。
つまり、多くの若きバスケ選手は動作の前提となるはずの体幹、ケツの機能が低いのです。
であれば、シュートにおいても体幹、ケツに介入するのは当たり前ですよね。
なので私は、体幹とケツの前提となる機能が十分にある選手の場合のみ、膝関節や肩関節に介入します。
今まで私に直接、膝や肩の指導を受けた方は小さくガッツポーズをしてください。
まとめ
さて、長々と書いてきましたが、やっとまとめです。
最初に書きましたが、この記事は良いとか悪いとかを言っているわけではありません。
シュートにおいてケツは重要ですし、ケツを中心としたシュート指導も間違っていません。
その選手にケツの機能が足りない、という評価があれば正しい指導です。
それが選手を最も成長させるのですから。
ただ、「シュートはケツでうつ」というのはトレンドであるという可能性があることを決して忘れないでください。
(個人的な見解としてはトレンドであると言いました)
バスケのシュートという超特異的動作の指導はまだまだ発展の途上です。
おそらく様々なトレンドが今後出てくるでしょう。
特定部位に心酔せず、シュートは全身動作であるという前提を忘れないようにしましょう。
最後に、
次に来るシュートのトレンドを当ててみましょうか。
おそらく「肩関節」です。
もう少し詳細に言うと、「肩甲帯の機能」です。
というかトレンドにしようとしています。
BMSLで売り出したこの資料「機能解剖学に基づくシュートフォーム」は肩甲帯の機能を中心としたシュートの話をしています 。
肩関節の次はまた「ケツ」に戻るでしょう。
そして、その次くらいが「膝関節」かな…笑
トレンドに振り回されないように、でも、寛容に指導にあたりたいものです。
長文失礼いたしました。