娘が「踵(かかと)の痛み」を発症しました。
医者から安静にしていれば良くなりますと言われたのですが、
なにかできることはありますか…?
こんにちは!
医師の診察を受けられたのですね。
運動中止中でもできることはあります。
ぜひ参考にしてみてください!
こんにちは!BMSL(@Basketball_MSL)です!
子どもの感じる踵の痛み「Sever病」についてです。
今回はリハビリテーションについて書いていきますが、
その前に!大切なことをお願いさせてください。
踵の痛みを感じ、バスケットや日常生活に支障が生じた場合は、
必ず医療機関(病院、クリニック、整形外科等)を受診して下さい。
必ず医師の診察を受け、診断をしてもらって下さい。
この記事で記載する様々なプログラムを試してみて頂いても構いませんが、あくまでも自己責任になりますので、これだけで治療を済まそうとすることは絶対にやめて下さい。
それでは内容に入っていきます!
「踵の痛み」の病態
まずは簡単に「踵の痛み」についてからです。
お願いします!
別記事で詳しく書いていますが、子どもの「踵の痛み」の多くはSever病と呼ばれるものです。
成長期によく運動する子に発症しやすいとされています。
\ 別記事で復習したい方はこちら /
原因として、Sever病は衝撃ではなく筋腱による張力によって発症すると言われています。
成人の完成した踵の骨であれば、筋腱の張力で骨が痛むことはないのですが、
成長期(15歳頃まで)のまだ踵の骨が完成してない時期では、筋腱による張力に骨が負けて痛みが生じます。
踵が地面につくときの衝撃で痛くなるのかと思ってた…!
もちろんゼロではないでしょうが、
張力によるものがメインとされています。
踵に張力を与える筋腱
アキレス腱と足底筋膜が踵に張力を与える主な筋腱です。
つまり、ふくらはぎからの張力と足の裏からの張力によって踵の骨は両方向に引っ張られているということです。
この張力が踵の骨の強度や回復能力を超えてかかってしまうと痛みが生じると考えられます。
なるほど!
Sever病はスポーツ障害
繰り返しになりますが、Sever病は運動を良くする子どもに発症すると言われています。
特に週に何回もの練習があるクラブに所属している子や、運動強度の高い競技をしている子です。
バスケットもダッシュやジャンプなど強い力を必要とする動作が頻回に繰り返されるスポーツなので、Sever病が発症するリスクは高いといえます。
つまり、
その張力に耐えられるほど骨が強くなれば(成長すれば)痛くなくなるってこと?
その通りです。
ただ、骨が成長を終えるまで運動を休みますか?となりませんか?
たしかに…
小学生どころか中学生まで休むことに…。
基本的な治療方針
Sever病はスポーツ障害なので基本的には安静が必要になります。
ただ、闇雲に運動をやめると言うよりは、病態を理解した上で賢く休むことができると、選手もモチベーションを高く維持しやすいかなと思います。
賢く休む!?
できることを、できる範囲で、やろう!ってことです。
それが聞きたかった!
何もしないで休むだけなんて、娘も可哀相で…。
患部の安静
まずは一番大切な「安静」について。
痛みの原因は筋腱の張力によるものですから、
- 張力を弱める
- 加わる頻度を減らす
といったことができれば、何もしない状態よりは患部へのストレスを減らすことができます。
なるほど!
全休だけが安静ではないと!
そうですね。
運動強度や量の調整で安静度は調整できます。
つまり安静はゼロor100ではないということなんです。
さらに…
患部の安静は、実はかなり考える要素が多いのです。
たとえば、先ほどの練習量の調整であったり、メニューの調整といった環境面の調整は簡単に思い浮かぶかと思いますが、
柔軟性の改善や身体の使い方の修正といった身体面の調整でも踵へ加わる張力を減らすことができるのです。
簡単にいうと、足首だけで頑張り過ぎてしまう選手が、股関節や膝を上手に使えるようになった場合、自ずと足首の負担は減ります。
つまりこれも「患部の安静」の度合いが上がったと考えられるのです。
「環境面の調整」と「身体面の調整」か…
それぞれ解説していきますね。
環境面の調整
こちらはイメージしやすいはずです。
- 長距離の歩行を控える
- 週の練習日を1日減らす
- ダッシュなどのラントレのみ見学にする
- 試合形式の練習中は椅子に座ってハンドリングをする
などなど…。
本人の理解とチームの協力が必要ですが、小さなことから踵へ加わる張力を減らすことは可能です。
主には「頻度」を減らす戦略になると思います。
身体面の調整
こちらは、ふくらはぎや足の裏の硬くなっている筋肉をほぐしたり、ストレッチで柔軟性を高めるといった介入によって直接踵への張力を減らす方法と、
踵への張力増加の原因となっていると考えられる弱い筋肉や硬い関節を改善し、負担のかかる姿勢や動作を修正するという、言ってしまえば間接的に張力を減らす方法があります。
主な介入としては、
- マッサージ
- ストレッチ
- エクササイズ・トレーニング
といったものです。
こちらは張力の「強度」を減らそうとする戦略ですね。
マッサージなどは即時的に踵にかかる張力を減少させることができます。
なのでマッサージ後に「痛くない!!」となることもしばしあります。
しかし、本質を見れば、踵に負担がきてしまう間違った動作や不適切な姿勢を修正するというのが理想になります。
マッサージなどをしつつ、動作・姿勢修正かな?
理想のスタイルですね。
動作・姿勢の修正にはどうしても時間がかかりますから。
痛みと運動量の目安
さて、それでは具体的に痛みと運動量の目安を見ていきましょう。
まずは大体これくらい、といったイメージができることが大切です。
痛みと付き合いながらのリハビリで重要なのが、踵の状態と運動の強度のすり合わせです。
これはあくまで目安ですが、過剰な安静や無理な競技復帰を防ぐために必要なことです。
過剰な安静は別部位の筋力低下やそれに伴うケガを誘発する恐れがあります。
下の表を見てみてみましょう。
例えば、
痛みが出る動きの一番上、「空中底背屈」は、足を持ちあげて足首を動かしただけで痛みが出る状態です。
体重もかけずに動かしただけで痛いのであれば、ハンドリング程度にしておきましょう、ということになります。
なるほど。
痛みの程度と、できそうな練習が参考に書いてあるのですね!
下にいくにつれて、踵にかかる張力が強くなっていきます。
痛みと運動量をうまくコントロールしながら復帰を目指せることが理想ですね。
上の表は、かなり大雑把かつ曖昧ですが、様子を見つつ段階的に強度を上げていくことが重要です。
一つの目安にしてみてください。
個人差もありますので、この表に完全に当てはめるのは難しい場合もあるでしょう。
セルフで行うリハビリテーション
それでは具体的なリハビリのメニューに入っていきたいと思います。
ストレッチは毎日、各部位20秒以上行って下さい。
トレーニングは週4回以上を目指しましょう!
待ってました!
ストレッチ
まずはストレッチを6つ紹介します!
足底筋膜
足の裏のストレッチからです。
左右の差もしっかり気にしてあげましょう。
このストレッチの前後にマッサージも取り入れるとより効果的です。
これは簡単にできそうだし、いいな!
下腿三頭筋(ふくらはぎ)
ふくらはぎには2つの大きな筋肉がついています。
どちらもアキレス腱となって踵につくため、両方をストレッチする必要があります。
詳細は別記事でご覧ください。
これはよくやるストレッチだけど、こんな方法があったとは…!
ハムストリングス
ハムストリングスのストレッチはこれまでの記事でも多く登場してきました。
それほど様々なケガや動きに関係してくるということでしょう。
上手に伸ばせるようになるとパフォーマンスにもリハビリにも効果的です。
大殿筋(お尻)
大殿筋のストレッチもふくらはぎ、ハムストリングスに続いて踵の負担を減らすためには重要です。
大殿筋とハムストリングスが連結しているということもそうなのですが、股関節周囲のとても大きな筋肉であり、
これがよく働くことで足関節の負担を減らせるという意味でも重要なのです。
ぜひマスターして欲しいストレッチです。
腹直筋(腹筋)
腹筋って意外とストレッチしたことがないのではないでしょうか。
「トレーニングはするけど」
という選手は要注意です。
腹筋のストレッチはしたことないかも…
腹直筋は体の前についている筋肉ですので、これが硬くなると身体が丸くなる方向に引っ張られます。
そうすると股関節が使いづらくなったり、膝が前に出やすくなったりと、最終的には踵への張力を増やすことにも繋がってしまいます。
踵から離れた部位ですので関係なく思うかもしれませんが、
下肢のスポーツ障害を有する選手には必ず処方するストレッチです。
脊柱(背骨)
腹直筋のストレッチとセットで行ってほしいメニューになります。
身体の向きが少し変わっただけで、動かす方向は同じことに気が付きましたでしょうか。
腹直筋が硬くなり、背中が丸くなっている人は背骨自体もかたまっていることが多いので、
こうしてフォームローラーなどを利用してしっかり伸ばす必要があります。
自宅にフォームローラがない人は買いましょう。
これはもうマストアイテムと言っても過言ではありません。
フォームローラー、選手の保護者にも購入を勧めています!
エクササイズ・トレーニング
次はトレーニングです!
トレーニングと言ってもダンベルなどは使わない、自重トレーニングを選びました。
バランスをとったり、自分の体の動きに集中したり、そういった部分もトレーニングとして重要な部分なので意識しながらできると良いでしょう。
ふむふむ!
足底筋(足の指)
ストレッチ、マッサージでで足の裏をほぐした後はしっかりと筋肉を動かしましょう。
筋肉を動かすとそれ自体が伸び縮みの作用でマッサージとなり、血流も良くなるので効果的です。
椅子とタオルがあればできるので、練習の見学中でもできそうですね(^^)
なるほど!
これならできないメニューの間にできそう!
ハムストリングス
こちらはBMSLの記事でも出てきている種目になります。
片足バランスの要素も含むのでやや難易度は高いかもしれません。
どうしても難しい場合は下図のように手で少し支えてあげると言いでしょう。
注意点がいくつかあります。
- 背中をまっすぐに保つ
- 膝が前後に動かない(スネは動画のようにずっと垂直)
膝が前後に動いてしまうということは、足関節も動いてしまうということです。
特に右図のように膝が前に出るとふくらはぎに強い力がかかるため、踵への張力が発生してしまいます。
動作中はスネを垂直にし、足の裏全体で地面を踏むようにしましょう。
こ、これは意外と難しいぞ!
中殿筋
とてもシンプルなトレーニングですが、上手にできるとかなりキツくなるはずです。
回数や挙げる足の高さにこだわらず、動く筋肉に集中して行いましょう。
上手にお尻の横を疲れさせることができてきたら、チューブを巻くとよりハードなトレーニングとなります。
ただ、無理して変な動きにならないように注意しましょう!
大殿筋(お尻の筋肉)
ヒップリフトは様々な方法があるのですが、個人的によく患者さんに使うのがこれです。
ピラティスの方法は腹筋と大殿筋、ハムストリングスが上手に力が入るのでオススメです。
動画のように呼吸も意識できると更に良いでしょう。
動画中にもありますが、背筋に力を入れすぎて背骨が反らないように注意しましょう。
脊柱
フォームローラーで可動域を拡大した分、しっかりと筋肉を使ってその範囲を動かしましょう。
野球選手やサッカー選手が積極的に取り入れているメニューですが、バスケ選手も絶対にやるべきメニューです。
脊柱が上手に動くようになると、効率的な動作が可能となり、下肢への負担が少なくなると言われています。
これは踵が痛くなくても、下肢のスポーツ障害予防として取り入れるべきかもしれません。
最近、こういうのプロの選手がやってるの見るな
おわりに
いかがだったでしょうか。
提示したメニューは、踵が痛くなる子に是非やって欲しいものを選びました。
全部やれ!とは言いませんので、
どれか一つでも取り入れてていただければ幸いです
焦らず、しっかりと身体の調整をし、痛みのないバスケットができるように頑張りましょう。
長文失礼いたしました。
バスラボでは、オリジナルのバスケ資料をnoteで販売しています。
資料タイトル一覧
- 機能解剖学に基づくシュートフォーム
- シュート探求:肘の挙がりと曲がり
- No!More!オスグッド・シュラッター病
- Physical Fitness Test for Basketball Players
「曖昧なシュート指導からの脱却」、「障害予防の啓発」、「バスケに特化したスポーツテストの普及」を目指し、資料を作成・販売しています。ぜひチェックしてみてください!
コメント